現代が求めるリーダー像はどのようなものか ー「リーダーシップ3.0」に学ぶー

By | 2016/08/02

リーダーシップのある人といったら誰をイメージしますか?
また、なぜその人をイメージしたのでしょうか?

多くの人は生まれ持ったカリスマ性を活かし、先頭に立ってメンバーを率いる人を想像すると思います。
しかし、そのようなカリスマ型のリーダーでは変化の激しい現代に生き残ることはできません。求められるリーダーシップは時代ともに変化しています。
今回は、どのようにして現代が求めるリーダー像はどのようなもので、どう変化してきたのかがわかる、小杉俊哉さんの「リーダーシップ3.0 カリスマから支援者へ」を紹介します。

リーダーシップ1.0

権力者<中央集権> 1900 ~ 1920年代まで

権力者がヒエラルキーの頂点にたち、指示命令により中央集権的に組織を支配する形をとったものでした。
リーダーシップ1.0の代表的な人物はフォード・モーターの創立者であるヘンリー・フォードです。
この時代以前のモノづくりは職人が一から組み立て完成させる工程をとっていました。しかし、ヘンリー・フォードによりモノづくりの工程に流れ作業を導入したのです。
他の会社も真似をし、大量生産の時代がやって来ました。

しかし、ユーザは自分の好みの色や形や性能を求めるようになり、中央集権的な大量生産では対応ができなくなっていきました。

リーダーシップ1.1

権力者<分権> 1930 ~ 1960年代まで

各事業部に責任者を置き、そこに権限を委譲して組織全体をコントロールする形をとったものでした。
事業部ごとはリーダーシップ1.0と同じ形をとっており、形式的にはほとんど変わらないため1.1と定義しています。
リーダーシップ1.1の代表的な人物は1920年にゼネラル・モーターズのCEOに就任したアルフレッド・スローンです。
アルフレッド・スローンは世界で初めて事業部制を敷いた人物です。
事業部制にすることでユーザのニーズに応じることができるようになりました。

しかし、事業部制は現場とマネージャとの対立を深めることになり、階層による厳格な管理、賃金のみによる動機づけは社員のやるきを削いでいった。
また一回下した指示や命令は見なおしたり、フィードバックを行ったりするプロセスを持っていなかったため急激な変化に対応できなかった。

ちなみにゼネラル・モーターズが事業部制を敷いたほぼ同時期に日本の松下電器産業も事業部制を導入しています。

リーダーシップ1.5

調整社 1970 ~ 1980年代まで

組織全体に価値観と働く意味を与えること、雇用の安定を図るなど協調を促し組織全体の一体感を醸成することで組織を牽引する形をとったものでした。
従来のリーダーシップとは違い権力では率いていません。
日本人の性質上このやり方がはまり、第二次世界大戦後に急激な成長を遂げました。結果日本はGNP世界第二位になり、ジャパン・アズ・ナンバーワンとまで言われ各国から模倣の対象となりました。

80年台のテレビドラマで男女関係場面でのセリフに「あなたは私(家庭)と仕事とどっちが大切なの」というものが多発しました。
これはリーダーシップ1.5が会社を公私の区別をしないものであったためです。
そして、この形は1991年のバブル崩壊後急速にその輝きを失っていきました。

リーダーシップ2.0

変革者 1990年代

組織の方向性を提示し、大胆に事業領域や組織の再編を行い、競争や学習を促し、縦割りの部門間・社員間の交流、活性化により組織を変革する形をとったものでした。
これまでのなまぬるいリーダーシップを否定し、毅然と大胆に行動するカリスマ性を持ったリーダーが当てはまります。
リーダーシップ2.0の代表的な人物はGE(General Electric)のジャック・ウェルチです。
ジャック・ウェルチは大量生産・大量販売というパラダイムからいち早く脱し、製品とサービスをバンドリングさせた新しいビジネスモデルの構築にシフトしました。その際に大規模なリストラを実行し、社員を選別しました。そして教育への投資を惜しみなくしました。また各部門のマネージャをランク付けし、500人あまりのマネージャとの直接対話の機会を設けました。
このように今までのリーダーとは違う様々な面を見せました。

他にもアップルのスティーブ・ジョブズやマイクロソフトのビル・ゲイツ、IBMのルイス・ガースナーやHPのカーリー・フィオリーナがこのリーダーシップに含まれます。

カリスマ型のリーダーは権限集中・トップダウンであります。そのため、リーダー個人の力量に依存するところが大きいため組織が個人の枠を超えることができません。
リーダーは自身の経験に裏打ちされた明確な回答に従い、データや事実に基づいて判断をくだします。そのため、リーダーが必ずしも答えを持っていないような状況では、カリスマ故に企業をミスリードしてしまうことが発生します。
また社員が受け身になり、現場で意思決定することができなくなってしまいます。

リーダーシップ3.0

支援者 2001年 ~

これまでのヒエラルキー組織を逆転して、逆ピラミッドの最も下にリーダーがいて支える形をとったものでした。
組織全体にビジョンを共有させると同時に、社内外の人とコミュニケーションを取ることで支援することで支援する役割を果たします。こうして社員個人個人が自律的に動き、組織全体の価値創出へ導きました。
この自立した社員が付き従うことが大切であると言えます。

リーダーシップ3.0を実践している企業に、HCLテクノロジーズ、サウスウエスト航空、資生堂、スターバックス、ホンダ、マッキンゼー、IDEOなどがあります。

感想

リーダーシップ3.0はカリスマである必要はなく、チームを支援することができれば良いと述べられているが、自律した個人を生み出すことは、人間力の高い人のみができる技なのだと感じました。
トップダウンではなく、個人個人と対応に関係を築くことができるカリスマはまさに従来のカリスマリーダーの1段階上を行っているであろう。
これから先リーダーシップ3.0がどのように使えなくなり、リーダーシップ4.0がどのようなものになるのか楽しみである。

また、この本では主に企業におけるリーダーシップを述べており、現代だからといってリーダーシップ3.0が絶対的に正しいというわけではない。
場に応じて必要とされるリーダーシップがあり、柔軟に対応していく必要があるでしょう。

最後に

時代とともにリーダーシップの形が変わってきていることがわかったと思います。
その他にもそれぞれの企業で実際にどのようなリーダーシップが取られているのかの具体的な内容や、リーダーに必要とされるもの、リーダーシップ3.0の具体的なモデルなどが書かれています。
リーダーシップという複雑な概念を様々な角度から論じた書籍となっており、自分が目指すのはどのリーダーシップ像かを考えさせる一冊となってます。
読んでおいて損はないと思いますので手にとって見てはいかがだろうか。


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